幻の長崎古版画 展  

2023年1月20日~4月9日

 鎖国政策をとっていた江戸時代の日本。海外に開かれた唯一の窓となった長崎出島は、西洋文明輸入、吸収の場となっていました。この特殊な土地を背景に生まれた、長崎古版画(長崎絵)は、江戸中期から幕末までの間に制作されたユニークでエキゾチックな版画です。

 浮世絵などの江戸、上方絵と異なる点は、それが日本独特の美人、風俗などをモチーフとしたのに対し、異国情緒即ち異国船、異国人、異国風物などや異国船渡来以来の唯一の港である長崎地図を加えて描かれていることです。また、彩色が派手ではなく単純素朴であり、中国的版画と西欧銅版画の手法をミックスして取入れている点も特徴の一つとなっています。

 この版画が専門家に取り上げられ、好事家の注目を浴びるようになったのは、大正末から昭和の初めにかけてでした。当時から既に数も少なく、価も高く、なかなか手に入りにくいものでした。日本の版画全般の上から見れば、その一分野にすぎない地方版画でありながら、独自の存在価値を誇るものであり、一種不思議な魅力をもった版画として高く評価されてきました。

 旅の土産物として製作販売されましたが、一版の摺りは2~30枚までが限度であったため、浮世絵の200枚に比べてあまりにも少なく、現存する版画の総数は、海外に流出したものを含めても、5、6百枚位と言われています。

  今回の展示作品は幻といわれるオリジナル版画の他、長崎市立博物館所蔵の版木により摺り立てられた作品も含め約31点で構成し、その時代のエキゾチックな魅力を存分に味わっていただきたいと思います。

◎同時開催 館所蔵・茶道具名碗展&時代蒔絵琴展

 

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