コノキ・ミクオ新作彫刻展

~そして今また、ガンダからの展開~

                         

  コノキ・ミクオ(此木三紅大)は、洋画家としてその道をスタートした。美大を卒業後、イタリア・ローマに留学。帰国後、新進の若手画家たちとともに、より自由で活発な作家集団「青枢会」を創設。

以来、生命賛歌を掲げて四十余年に亘る活動を続けている。また、日本扇面芸術協会、日本ガラス絵作家協会の設立に関わるなど、広く芸術活動を展開して来た。アトリエを八日市場市(現・匝瑳市)

に移して三十数年、地域の作家との交流、埋もれた作品に対する正当な位置付けなど芸術的な独自の鑑賞洞察の眼で温かく見守り、個の芸術活動の他にも確かな足跡を見せている。

 しかし、近年、この地で此木自身が新たなる創作活動の萌芽を見せた。まさに、若き作家がもう一人誕生したかのような勢いで、取り組んで来たのがガンダ彫刻である。ガンダとは、銚子近辺の言葉で、

鉄屑や使い古して捨てられた道具などをいう。役目を終えたとはいえ、それぞれが持つ力強さ、機能的な美しさ、個性的な造形の確かなあり方に作家は惹かれた。ガンダの呼びかける詩に導かれるよう

に、物語をともに奏でるように、アーティストはガンダと遊ぶ。忘れられた鉄の端くれは、もはや鉄屑ではなく、息づくアートに生まれ変わっていく。それが、鉄の造形・ガンダ彫刻である。

 使い捨てから再利用へと時代は動いている。公害やゴミ処理で悩む今、此木の思いは、昔の百鬼夜行絵巻などで見る、捨てられた古道具の妖怪たちが見せる滑稽な戯画が、現代人への警鐘ではな

かったのかと。鋤や鍬やスコップ、ツルハシ。道具の姿を少しとどめて、ガンダ彫刻は、生命の賛歌を歌い続ける。

 そして3・11の震災以後、詩作に没頭していた彼は、その詩の世界から抜け出してきたように今、彼の新たな立体制作が始まった「人間の顔(頭部)シリーズ」の制作である。そしてその素材は、鉄屑から

悲喜交々の表情が彼の指を伝わって直接に表現できる〈粘土〉に置き換えられたのである。

展示された頭部の其々の表情には、笑いと悲しみ、怒り、絶望と希望、慈愛と畏敬などが詩のごとくに表現されている。

     

                   

          

     

    

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